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「キリストによる罪の贖い」

  • urawa-church
  • 2023年12月3日
  • 読了時間: 10分

2023年11月26日 降誕前第5主日 

説教題:「キリストによる罪の贖い」

聖書 : 創世記 4章16節-23節(6㌻)​​

   ヨハネによる福音書 15章12節-17節(199㌻)

説教者:伊豆 聖牧師


 私達の周りを見てみると、世界はあまり良い方向に向かっていないということを感じています。先程も私達は祈りましたが、ウクライナとロシアの戦争は未だに続いています。そして多くの一般市民、特に子どもたちが犠牲になっています。またパレスチナとイスラエルの間でも戦争が始まってしまいました。元々あそこの地域では戦争・戦闘行為というものは日常茶飯事だったようです。ですが、今回はパレスチナのハマスという組織がテロ行為を行い、イスラエル人を始め、多くの外国人を殺害もしくは人質として拉致をしたことによって、イスラエル軍によるガザ地区への砲撃、空爆などの戦争へ発展していきました。


 国内に目を向けますと、インターネットによる誹謗中傷が溢れています。もちろん私達は言論を尊重する社会に住んでいます。しかし、言論の自由、そして報道の自由を盾に人を攻撃することが多く見受けられます。結果としてその攻撃の犠牲になられる方々もいらっしゃるということです。またかと言われるかもしれませんが、例の芸能事務所で性的被害に遭われた方々がおられます。その方々がその被害を訴えているのですが、彼らに対して心無い非難の声が浴びせられているとのことです。いわゆる、「お金目当てでそういうことをしているんだろう?」「おまえのせいで大好きな 事務所がこんなひどい状態になっているんだ。責任を取れ。」というようなことです。実際性被害を訴えていた方が自殺をされたということです。私達の周りには戦争という実際の暴力とインターネットを使った誹謗中傷という言葉の暴力があります。


 さて、本日の聖書箇所です。カインとアベルの物語です。皆さんもご存知かとは思いますが、最初の人類であるアダムとエバの息子たちがカインとアベルです。アダムとエバは楽園で主から食べてはいけないと言われていた善悪の知識の木の実を蛇に誘惑されて、食べてしまいました。主は「食べると死んでしまうから」という理由で食べてはいけないと仰ったのですが、蛇が「そうはならない。食べると主の様に善悪を知る者となる事を知っているのだ。」と言い、そそのかしました。そしてエバはその実を食べ、夫であるアダムにもそれを与え、彼も食べたのですが、彼らの目が開かれました。結果として彼らはその場では死にはしませんでした。しかし、彼らは主の命じられたことを破ったわけです。だから彼らは楽園から追放されたのです。


 私は彼らが主がお命じになったことを破ったから、楽園から追放されたと言いましたが、事はそう単純なものではないのです。

蛇に誘惑されるまで、主とアダムとエバの関係は良好でした。主は彼らのために良いことを願って、良いことだけをされてきました。そして彼らもその事を信用していました。疑うことなどなかったのです。しかし、蛇は主がその善悪の木の実を取って食べるのを禁じた理由は彼らが主と同じように善悪を知る者になってほしくないからだと言いました。つまり主が悪意を持って彼らを主と同等になってほしくないと考えているとエバに思わせたのです。


 もちろん、人間である彼らが主と対等になれるはずはないのですが、主と対等になりたい、この善悪を知る実を食べれば主と対等になれるはずだと蛇はエバに思わせてしまいました。そして彼らはそう思い実行した。ここに罪があったのです。これがいわゆる罪、原罪と言われているものです。そして結果として主が命じていたことを彼らは破り、楽園にとどまれば命の木の実を取り、永遠に生き続けるかも知れないということで、楽園から追い出されたということです。原罪があり、結果として主のご命令を破り、主との良好な関係が壊れ、楽園から追い出されたので、命の木の実を食べることが出来ず、永遠に生きることが出来ず、死が入り込んだということです。


 さて、このようにアダムとエバは楽園から放逐されてしまったわけですが、主は彼らを全く見捨てたわけではないのです。主は裸の彼らに皮の衣服を作ってくれたということです。さらに言えば主は彼らの息子たちであるカインとアベルとの交流があったということです。それは本日の聖書箇所の前の部分、創世記4章3節から4節を見ればわかるかと思います。ということは彼らの父母であるアダムとエバともまだ交流が続いていたということを思わせるのです。

 ですが、ここで主とカインとアベルとの関係で問題が発生してしまうのです。アベルが献げ物として持ってきた羊には主は目を留められるのですが、兄であるカインが持ってきた農作物には目を留められなかったということです。なぜ、主はアベルの献げ物に目を留められ、カインの献げ物に目を留められなかったのかは諸説ありますが、よくわかりません。3節で「カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。」と書いてあり、4節では「アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。」と書かれている。つまり、カインは献げ物をただ持ってきたのに対してアベルは最良の物を献げ物として主の前に持ってきたから主はアベルの献げ物に目を留め、カインの献げ物に目を留められなかったという説もあります。ですが、その説で確定というわけではないのです。


 主は心の中までおわかりになる方です。ですからこのカインの心の本質というものがおわかりになっていたのではないでしょうか。

主のアベルの献げ物に対しては評価するがカインの献げ物を評価しないという事にカインは怒り、顔を伏せました。

そのような態度を取るカインに対して主はこう仰せられました。

「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。もしお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」

(創世記4章6節から7節)

その後、主が弟アベルに目をかけるのが気にいらないカインは弟を殺してしまいます。嫉妬です。

 やはり、一方に目をかけ、他方に目をかけないというのは人間関係をギクシャクさせ、悲劇を生みます。イサクとリベカの息子たちはエサウとヤコブでしたが、イサクはエサウを可愛がり、リベカはヤコブを可愛がりました。イサクが祝福をエサウに渡そうとしているのをリベカが知り、ヤコブが受けられるよう画策したのはリベカでした。ヤコブはこの前に長子の権利をエサウからあまりいい方法ではないのですが、得ていたので、今回は祝福をも手にしたということです。このリベカのお陰で。


 また、このヤコブには多くの子供達がいたのですが、なかでもヨセフを可愛がりました。それはヤコブが最も愛した妻のラケルの息子だったからです。ヤコブは特別な晴れ着などをヨセフに与えるのですが、ヤコブの他の妻達の息子たち、つまりヨセフの異母兄弟たちは面白くありません。ある時、画策して、彼をエジプトに奴隷として売ってしまうのです。動機は何でしょう?嫉妬です。

このように一方を愛し、他方を愛さないということは悲劇を産みます。では主がアベルを顧みて、カインを顧みなかったから、カインは殺人を犯した。だから主が悪いとしていいのでしょうか?


 そうではなく、主はカインの心の本質である悪を見抜いていたのではないでしょうか?更に言うならば、主は恵みたい者を恵み、厭いたい者を厭う神です。例えばイサクの息子エサウとヤコブを例に取りますと、ヤコブは次男にも関わらず、長男であるエサウから長男の権利を奪い取り、次にエサウがもらうはずだった祝福を父イサクから騙し取りました。主から呪われてもおかしくないような人物です。しかし、主はヤコブを助けます。


 パウロはローマの信徒への手紙でこの事についてこう言っています。「『わたしはヤコブを愛し、エサウを憎んだ』と書いてあるとおりです。では、どういうことになるのか。神に不義があるのか。決してそうではない。神はモーセに、『わたしは自分が憐れもうと思う者を憐れみ、慈しもうと思う者を慈しむ』と言っておられます。従って、これは、人の意志や努力ではなく、神の憐れみによるものです。」(9章13節から16節)

「このように、神は御自分が憐れみたいと思う者を憐れみ、かたくなにしたいと思う者をかたくなにされるのです。」(18節)


 長々と話してきたのですが、この兄カインによる弟アベルの殺人は主がアベルを顧みたこととは関係ないのです。

さて、弟アベルを殺したカインに主は問いかけます。

弟アベルはどこにいるかと。カインは何と答えたでしょうか?

「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」(創世記4章9節)

自分の弟を殺しておきながらふてぶてしい態度と言わざるを得ませんね。またこの言葉にはまだ弟に対しての嫉妬と主に対しての怒りを感じさせます。


 10節から12節にかけて主がカインの罪を明らかにし、カインが受ける罰、すなわちさまよい、さすらい人になるということを宣言されます。そうすると一変して泣き言をカインは言うのです。

13節から14節に書かれています。「さまよい人、さすらい人になってしまえば、わたしに出会う人はわたしを殺すでしょう。」とカインは言うのです。しかし、主は彼の額にしるしをつけられ、彼を殺そうとする者は7倍の復讐を受けると約束されました。そして彼は主の前から去りました。


 カインが弟アベルを殺して受けた罰は何かと言えば、主から離れ地上のさすらい人になることです。人を殺しておいてそれだけですかと思われるかも知れません。確かにそうです。しかし、主から離れる、主との関係を断つということは大変なことなのです。主なしで人生を歩んでいくということです。

17節から23節までカインが主から離れてからの彼の系図があります。23節から24節「さて、レメクは妻に言った。『アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。』」

カインの七倍の復讐は地上の人間がカインを殺さないようにということで主が設定したものです。本来カインはさすらうよりももっと厳しい罰、例えば死刑を受けてもおかしくなかったかも知れないのです。しかし、主のご温情、哀れみによってこのように守られたのです。それを利用してこのようなセリフが出てくるということはレメクはそしてカインの一族というのは相当悪い人達ではなかったでしょうか。アダムとエバが原罪をもって神との契約を破り、楽園から追放され、カインがアベルを嫉妬によって殺してしまい、カインと彼の子孫レメクの傲岸不遜さを見てみると、つくづく人は罪深いものであるなと思います。そしてこのカイン、レメクの罪が私達の中にもあるのです。そして、本日の説教の前半部分で話した戦争、誹謗中傷のなかにこのような罪があるのです。


 救えるのは主イエスの御教えと十字架による私達の罪の贖いです。カインに対しての復讐が七倍、レメクに対しての復讐は七十七倍とありますよね。ですが、ペトロが主イエスに「もし兄弟が私に対して罪を犯したのであれば何回赦すべきですか?7回までですか」と聞いた時、主イエスは7を70倍するまで赦しなさいと仰った。当時のユダヤ教のラビの教えでは3回まで赦しなさいといわれていました。ですからペトロが「7回までですか?」と主イエスに聞いたのは、「お師匠様3回という一般的なラビの教えよりも私は多く赦そうとしていますよ。誉めて下さい」という意図が垣間見えます。それに対して主イエスはその7を70倍するまで赦しなさいと仰った。まだまだ足りないということです。そして単純に7の70倍を計算すると490回なのですがそういう意味ではありません。ユダヤ教で7は完全数なので、7の70倍まで赦しなさいとは無限に赦しなさいという意味です。そういう意味でこのレメクのこの七十七倍の復讐、この罪の力は主イエスの無限の赦しと愛に勝つことは出来ないのです。


 本日の第二の聖書箇所です。「わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい。これがわたしの掟である。友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。」

(ヨハネによる福音書15章12節-13節)

主イエスは十字架でこの事をお示しになられました。今は戦争においてはやられたらやり返すという復讐の連鎖が起こっています。誹謗中傷も同じです。誹謗中傷の応酬です。

これを断ち切るにはどうしたら良いでしょう。

キリストの愛に基づく御教えと十字架による罪の贖いでしかありません。

 
 
 

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