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「先駆者の誕生」

2021年12月12日 待降節(アドベント)第3主日礼拝

説教題:「先駆者の誕生」

聖書 : 新約聖書 ルカによる福音書 1章67-79節(102㌻)

説教者:伊豆 聖牧師


 本日は第3アドベントです。そして、来週は第4アドベント、クリスマス礼拝となります。いよいよ、主イエス・キリストの誕生を迎えられる礼拝を皆さんと共に行えるということを思うと何か胸躍る気持ちがします。この主イエス・キリストの誕生を待ち望む期待感を持つことこそアドベントではないでしょうか?クリスチャンではない方々にはクリスマスが主イエス・キリストの誕生を祝う日であることを知らない方々もいらっしゃいます。お祝いをし、美味しい料理やケーキを食べる日だと思っている方々も多いのです。実際、私がよく行くスーパーでは最近クリスマスパーティーセットの宣伝の放送が流れているくらいです。このように、クリスマスの本当の意味がわからない人たちですらクリスマス・イブやクリスマスが待ち遠しいと思いワクワクしているのですから、クリスマスのほんとうの意味、すなわち、私達の救い主である主イエス・キリストの誕生を祝うということを知っている私達が心踊らないはずがありません。


 私達の救い主である主イエス・キリストの誕生は旧約聖書時代の預言者たちが語ってきたことでした。

「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエル(主が共にいる)と呼ぶ」

イザヤ書7章14節、

「ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、『驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君』と唱えられる」

イザヤ書9章5節

「エフラタのベツレヘムよ お前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、わたしのためにイスラエルを治める者が出る。彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる。」

ミカ書5章1節

「娘シオンよ、大いに踊れ。娘エルサレムよ、歓呼の声をあげよ。見よ、あなたの王が来る。彼は神に従い、勝利を与えられた者 高ぶることなく、ろばに乗ってくる 雌ろばの子であるろばに乗って。」

ゼカリヤ書9章9節


 主イエス・キリストの誕生を預言してきた預言者達はどういう人たちだったでしょうか?どういう役割を担ってきた人たちだったのでしょうか?彼らは主から離れてしまった人々を再び主に立ち返らせるために神に立てられた人々でした。一旦は統一されたユダヤ人の国が北イスラエル王国とユダ王国に分裂し、それぞれの国が主から離れ、上から下まで不正がはびこっていました。彼らを再び神に立ち返らせることが神から預言者たちに与えられた役割でした。いわば、彼らは主イエスの先駆者たちでした。では、両国の民は預言者たちを通して語られた神の言葉に従ったでしょうか?彼らは従いませんでした。だから両国とも滅ぼされたのです。では、預言者たちは失敗したのでしょうか?確かに両国が滅ぼされる前に民を神に立ち返らせるという意味では失敗しました。しかし、主はバビロン捕囚の憂き目にあったユダヤ人たちを故郷に帰らせ、彼らの町と神殿を再建させました。そして、その時人々を勇気づけたのは預言者たちを通して語られた神の言葉でした。そしてなにより、預言者達は私達の救い主である主イエス・キリストの誕生を預言したのです。ですから、預言者達の行動が全く無駄であったということではなかったのです。すべては私達を救おうという神のご計画に基づいてなされたことであり、わたしたちの目からすると、無駄なことであっても、神の目からすると何一つ無駄なことはないのです。


 さて、これまで私は旧約聖書時代の主イエスの先駆者達、預言者達の事について語ってきましたが、主イエス・キリストがこの地上で伝道をなさっていた時代に生きた先駆者、預言者を挙げます。それがバプテスマのヨハネです。本日の聖書箇所はルカによる福音書です。個人的に言えば、この福音書ほど、このバプテスマのヨハネがだれの息子であったのか、どのように生まれたのかということが書かれた福音書はないと考えています。なぜ、彼の生い立ちがこれほど詳細に語られているかというのはこの福音書を書いた人物がルカだからかもしれません。彼は医者であり、詳細に記録することを旨としていました。ルカによる福音書1章1節から4節がそのことを表しています。「わたしたちの間で実現した事柄について、最初から目撃して御言葉のために働いた人々がわたしたちに伝えたとおりに、物語を書き連ねようと、多くの人々が既に手を着けています。そこで、敬愛するテオフィロさま、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、順序正しく書いてあなたに献呈するのがよいと思いました。お受けになった教えが確実なものであることを、よくわかっていただきたいのであります。」この文章を見る限り、ルカという人物がかなり几帳面な性格だということがわかります。その彼の几帳面さのおかげで、このバプテスマのヨハネという人物の詳細な生い立ちが分かるのです。


 バプテスマのヨハネは祭司ザカリアとアロン家の娘のエリザベトとの間に生まれた息子です。アロンという名前を皆さん、聞き覚えがあるかと思います。出エジプトで登場する祭司アロンのことです。つまり、エリザベトはこの祭司アロンの子孫ということです。祭司ザカリアと祭司アロンの子孫であるエリザベトといういわば祭司一家に生まれたのがバプテスマのヨハネでした。

 

 彼はただ祭司一家に生まれたというだけでなく、天使ガブリエルの啓示によって生まれました。彼の両親は子供が恵まれなかったのですが、天使ガブリエルが彼の誕生をザカリアに告げました。これは尋常ならざることです。「イスラエルの多くの子らをその神である主のもとに立ち帰らせる。彼はエリヤの霊と力で主に先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に正しい人の分別を持たせて、準備のできた民を主のために用意する。」と天使ガブリエルはザカリアに告げます。天使ガブリエルの言葉はまさしく旧約聖書時代に主の先駆者であり、預言者に与えられた役割です。だからこそ、バプテスマのヨハネは先駆者であり、預言者なのです。しかも、主イエス・キリストと同時代に生きた先駆者であり、預言者なのです。さらに、驚くべきことに天使の言葉どおりに身ごもったエリザベトは彼女の親戚であり、同じく天使ガブリエルの啓示により身ごもった主イエス・キリストの母マリアと会いました。

その後、誕生された主イエス・キリストは成長し、同じく誕生したバプテスマのヨハネのところに行き、洗礼を授けられたことは皆さんもご存知と思います。まさに、神のご計画の深遠さを見る思いです。


 本日の聖書箇所もまたこのバプテスマのヨハネが先駆者であり、預言者であることを彼の父であるザカリアが預言することで証ししています。「幼子よ、お前はいと高き方の預言者と呼ばれる。主に先立って行き、その道を整え、主の民に罪の赦しによる救いを知らせるからである。」ルカによる福音書1章76節から77節です。

私はこの説教の初めにアドベントでの主イエス・キリストの誕生を待つ期待感というかワクワク感というものを言いました。確かに私達がそういったものを持つことは大事です。しかし、同時に私達は主イエス・キリストの誕生の前に心を整える必要があるのではないでしょうか?もちろん、私達は主イエス・キリストを受け入れ、救われました。しかし、この時期、私達は旧約聖書時代に生きた預言者達の言葉やバプテスマのヨハネの言葉に耳を傾ける必要があると思うのです。「荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ』」これは預言者イザヤがバプテスマのヨハネを預言した言葉です。私達の心は主の前にまっすぐでしょうか?

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