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「宣教への派遣」

2022年7月3日 聖霊降臨節第5主日礼拝

説教題:「宣教への派遣」

聖書 : 新約聖書 使徒言行録13章1-12節(237㌻)

説教者:伊豆 聖牧師


 バルナバとサウロ(後のパウロ)の宣教旅行について書かれています。彼らはアンティオキア教会から出発したのですが、この教会に関して少しお話させていただきます。以前、私は説教でお話をさせていただいたのですが、主イエスの弟子でステファノという人物がいました。主イエスの弟子たちの数が増えてくるに従ってギリシャ語を話すユダヤ人からヘブライ語を話すユダヤ人に対して日々の分配に関して不公平な事が行われているという苦情がありました。これを受けて公平に分配を行うよう任された人たちの中にこのステファノという人物がいました。使徒言行録6章5節にはこのように書かれています。

「信仰と聖霊に満ちている人ステファノ」

しかし、ステファノは人々の悪意、中傷、そして偽証によって逮捕され、最高法院で取り調べを受け、最後は人々によって殺されてしまいます。この事は使徒言行録6章8節から7章60節に書かれておりますので、後でお読みになってみると良いかもしれません。この事件の後、教会に対して迫害は起こり、多くのキリスト教徒はこの迫害を逃れ、地方に散っていきました。彼らはフェニキア、キプロス、アンティオキアまで行ったということです。彼らはユダヤ人以外に福音を語らなかったということですが、キプロス島やキレネからアンティオキアに行った人々がギリシャ語を話す人々に福音を述べ伝えました。主が彼らを助けられたので主に立ち返った人々が増えてきたということです。その事がエルサレムの教会にも伝わり、教会はバルナバをアンティオキアに派遣します。彼はそこで主の恵みが満ち溢れているのを見て、喜ぶと同時に、人々に信仰によって固く立ち、主から離れないように彼らを勇気づけました。そして多くの人たちが主へと導かれたということです。さらに、バルナバはサウロの故郷であるタルソスに行き、サウロを見つけ出し、このアンティオキアに連れてきて、二人は1年間そこに留まり、多くの人々を教えたということです。

これらのアンティオキアの教会がどのように発展してきたかという事は使徒言行録11章19節から30節に書かれています。


 さて本日の聖書箇所の使徒言行録13章1節に入っていきます。

「アンティオキアでは、そこの教会にバルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、キレネ人のルキオ、領主ヘロデと一緒に育ったマナエン、サウロなど、預言する者や教師たちがいた。」

まず、ここで分かることはこのアンティオキアの教会では多くの才能を持った方々がいたということです。才能は英語で言えば、タレントですが、その語源はタラントンです。タラントンと言うと、マタイによる福音書25章14節から29節に書かれているタラントンの喩(たと)えを思い出してしまいます。主人が旅に出る前にその才能に応じて下僕に5タラントン、2タラントン、1タラントンを与えたが、1タラントンを与えられた者だけがそのお金を地中に埋めておき、主人の怒りを買ったという話です。

ですが私はこのアンティオキアの教会についてはその様な者はいなかったのではないかと考えるのです。なぜかと言いますと、本日の聖書箇所ではないのですが、先程私が申し上げたアンティオキアの教会の発展の過程にその理由があります。使徒言行録11章19節から30節ですね。アンティオキアの教会は迫害を受け散らされたキリスト教徒達が逃れてきた地方の一つでした。他の地方ではユダヤ人以外のだれにも福音を宣べ伝えなかったが、このアンティオキアではギリシャ語を話す人々に福音が宣べ伝えられたということです。そして「主がこの人々を助けられたので、信じて主に立ち帰った者の数は多かった。」と使徒言行録11章21節に書かれています。つまり、主がこの教会の発展を支えてこられたのだということです。主の御手がこの教会にあったということなのです。もちろん、この教会に危うさがなかったわけではありません。それは23節に書かれているバルナバのこの教会の信徒に対しての言葉に表れています。

「そして、固い決意をもって主から離れることのないようにと、皆に勧めた」

つまり、この信徒たちは主から離れる可能性があったということです。もちろん、元々彼らは迫害から逃れてきた信徒たちであり、その信徒たちの教えを受けた人たちです。彼らは迫害の事を実際体験するもしくは聞き及んでいるに違いないのです。ですから、迫害を恐れ主から離れる可能性は十分考えられることでしたし、それ以外の原因で主から離れてしまう可能性もあったのでしょう。しかし、バルナバ、サウロ、そして預言する人々がこの教会に集まり、信徒たちを指導することによってその懸念は払拭されたのではないかと考えます。そして、バルナバ、サウロといった多くの才能があり、なおかつその才能を神のために使おうという意欲のある人々がアンティオキアの教会に集まってきたのだと考えられます。そのような状態でバルナバとサウロの宣教旅行出発という事なのです。この教会が主に祝されていた事が分かると思います。さらに、この教会がそしてこの宣教旅行が主に祝されている事が分かる理由が本日の聖書箇所、使徒言行録13章2節に書かれています。「彼らが主を礼拝し、断食していると、聖霊が告げた。『さあ、バルナバとサウロをわたしのために選び出しなさい。わたしが前もって二人に決めておいた仕事に当たらせるために』」


 ここで重要な事は何でしょうか?彼らが主を礼拝し、断食している事もそうですが、聖霊が中心となっている事です。聖霊がバルナバとサウロを選んだのです。そして、聖霊が前もって彼らのために決めておいた仕事に従事させなさいと命じたのです。多分私達の中で誤解があるかと思うのですが、聖霊というのは何か超自然的なパワーを持った何かというものではないのです。もちろん、聖霊がそういう力を持っていないと言っているのではないのですが、聖霊はご人格を持っておられるのです。私達はどちらかというと御子なる主イエス・キリストの救いの事をよく言います。もちろん、私達は主イエス・キリストの十字架での死によって罪を赦(ゆる)されました。そしてそれは一重に父なる神の憐(あわ)れみによるもので、私達は主イエス・キリストを信じる信仰によってその事を受け入れることによって救われました。その事に間違いはないという確信を持っています。しかし、このご人格のある聖霊なる神の主導の事を忘れてはなりません。「主イエスが悪霊の頭によって悪霊を追い出している。」と言ったファリサイ派の人がいましたが、主イエスはその人になんと仰られたでしょうか?

「だから、言っておく。人が犯す罪や冒涜は、どんなものでも赦(ゆる)されるが、“霊”に対する冒涜(ぼうとく)は赦されない。人の子に言い逆らう者は赦される。しかし、聖霊に言い逆らう者は、この世でも後の世でも赦されることがない。」(マタイによる福音書12章31節から32節)

また、主イエスは聖霊の働きについてヨハネによる福音書16章5節から15節で語っています。

「その方が来れば、罪について、義について、また、裁きについて、世の誤りを明らかにする。罪についてとは、彼らがわたしを信じないこと、義についてとは、わたしが父のもとに行き、あなたがたがもはやわたしを見なくなること、また、裁きについてとは、この世の支配者が断罪されることである。」

(8節から11節)

「しかし、その方、すなわち、真理の霊が来ると、あなたがたを導いて真理をことごとく悟らせる。その方は、自分から語るのではなく、聞いたことを語り、また、これから起こることをあなたがたに告げるからである。」(13節)

つまり、聖霊、もしくは聖霊なる神は、父なる神、子なる神である主イエス・キリストと同じく大切なのです。ですから、私達は三位一体の神(父なる神、子なる神、主イエス・キリスト、聖霊なる神)を礼拝するのです。そしてアンティオキアの教会の活動、バルナバとサウロの宣教旅行はこの聖霊なる神によって主導されていたのです。人の思いではなく、神の思い、神のご計画によって主導されていたのです。ここが重要です。


 もちろん、神のご計画によって主導された物であっても困難もしくは障害がないということはありません。事実サウロ、パウロの宣教を見ればそれが分かるかと思います。しかし、困難や障害があったとしても神のご計画、ご意思に従った物であれば必ず成功します。このバルナバとサウロの宣教旅行でも障害となる人物がおりました。それはキプロス島での宣教の時です。地方総督セルギウス・パウルスという懸命な人物がおり、バルナバとサウロを招いて神の言葉を聞こうとした。しかし、この人物と交際していたユダヤ人の魔術師でバルイエスという偽預言者(魔術師エリマとも言われていた。)がこの地方総督を信仰の道からそらそうとしたのです。サウロはこの魔術師を叱りつけ、この魔術師はしかるべき罰を受けました。そして、総督は信仰に入りました。

ここで考え違いをしてほしくないことがあります。それはサウロがこの魔術師を打ち負かしたから、総督が信仰の道に入ったという単純な物ではないということです。もちろん、神は悪より強いのですが、総督が信仰の道に入ったのはそれが真理であるという確信を得たからなのです。ですが、それもまた聖霊のお働きであるとも言えます。重要なことはその人の行動が神のご計画によってなされているかということなのです。バルナバとサウロの宣教旅行は聖霊なる神のご計画に基づいています。私達の行動は私達の思いでなされているでしょうか?神のご計画によってなされているでしょうか?

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